新子厩舎のビーザベストと橋本厩舎のエイシンビッグボス、名門厩舎の次世代エース候補2頭が人気を二分した今年の園田オータムトロフィー。序盤は逃げたエイシンビッグボス、2番手につけたビーザベストが後続を引っ張りマッチレースになるかと思われた。しかし勝負所の3角で明暗が分かれる。ビーザベストは道中力んでいた影響により笹田騎手が懸命に追うものの思うように弾けず、逆にエイシンビッグボスの下原騎手は手綱を持ったまま。そこで2頭の差は一気に広がった。最後の直線では内に潜り込んだ最低(9番)人気のトリニティノットが猛追を見せたが、序盤でリードを奪いきったエイシンビッグボスがしのいで逃げ切り待望の重賞初制覇を果たした。
下原騎手は「1角ではリラックスして折り合いがついたし、3角の入りも楽に入れたので自分から動いていきました。これまでタメてタメて弾けない競馬が続いていたので、これで差されたら自分のせいと思って動きました」と積極的な騎乗で最高の結果をもたらした。
エイシンビッグボスは兵庫ダービーでは出走可能な12頭に入らず14番目で除外。その憂さ晴らしを狙った3歳AB特別でまさかの2着、さらにトライアルのクリスタル賞でも2着と歯がゆい結果が続いた。1400メートルと1700メートルでパフォーマンスが変わることから距離の壁を指摘する向きもあったが、それ以上に「暑さを気にしてこれまで調教ではそこまで思うように調教を進められなかった」と橋本師はそれまでの敗戦から感じ取っていた。そこで今回は「重賞仕様にハードに仕上げた。負けない!」と自信に満ちあふれていた。「レース展開はすべて想定内。最後は少しヒヤヒヤしたけどよく頑張ってくれたと思います」と描いたシナリオ通りの結果に師は笑顔を見せた。陣営が次に目指すところは11月2日に行われる全国交流の楠賞。「今回は距離を克服したが、本質的には短い距離が合うかなと思います」と下原騎手。橋本師も意見は一致している。ベストの条件で重賞連勝を狙う。
一方、2着に入ったのは伏兵のトリニティノット。中田騎手は引き揚げくるなり「悔しい!」と思わず声が出た。有力馬2頭を前に見ながら内に入れてロスなく立ち回る完璧な騎乗を見せた。「直線で少しひるんだところがあったけど、まだ乗り込みも軽く、ビシッと追ったことがない中でこの結果ですから、これからも走る馬だと思います」と愛馬をたたえた。
そして1番人気のビーザベストは3着に敗れた。笹田騎手は「(序盤に)外から引っ掛かってきた馬に被せられてムキになり、馬が力んでいた。仕掛けてからの反応もできていなかった」と悔しさを隠しきれなかった。しかしまだキャリアは7戦と浅く、これからの成長が楽しみである1頭には違いない。
■プロフィール
松本 健史
(まつもと たけし)
日刊スポーツ